【暴露シリーズ】「鉄筋コンクリートだから地震に強い」は大間違い!一級建築士が教える 壁式RC造の見分け方

【暴露シリーズ】「鉄筋コンクリートだから地震に強い」は大間違い!一級建築士が教える 壁式RC造の見分け方

鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)、木造(W造)という言葉を目にしたことがあると思います。これらは建物を支える構造の種類を示しており、それぞれに特徴があります。
その中でも「鉄筋コンクリート造」は優れた耐久性があり、多くのマンションや公共施設などで採用されています。

「耐久性だけでなく耐震性も高い」と思っている方も多いのですが、実は、「鉄筋コンクリート造」には種類があり、地震に強いタイプとそうでないタイプがあるのです。

この記事では、地震に強い「壁式鉄筋コンクリート造(WRC造)」を中心に、RC造のメリット・デメリット、そして一般的な「ラーメン構造」との違いを詳しく解説します。過去の地震被害事例も交えながら、壁式鉄筋コンクリート造の耐震性についてご紹介します。

1 鉄筋コンクリート造は一つじゃない!知らないと損する構造知識

「鉄筋コンクリート造(RC造)」は、鉄筋とコンクリートと組み合わせた構造です。「鉄筋コンクリート造」には2種類の構造タイプがあります。

  • ラーメン構造 : 柱と梁で建物を支える
  • 壁式構造 : 壁で建物を支える

今回お話したい地震に強い鉄筋コンクリート造というのが、後者の壁で支える壁式構造である「壁式鉄筋コンクリート造」です。

構造形式 ラーメン構造 壁式構造
形状 ラーメン構造 壁式構造
平面 ラーメン構造の平面図 壁式構造の平面図
室内空間 ラーメン構造の室内空間 壁式構造の室内空間
耐震性 標準 良い
間取りの自由度 ほぼ制限なし 制限あり
高層 建設可能 原則5階建てまで(特殊工法除く)

広義の意味ではどちらも鉄筋コンクリート造ですが、これらの構造は地震の揺れに対する抵抗力が異なるため、耐震性能の差に大きく影響します。

2 地震に強い「壁式鉄筋コンクリート造」のメリット・デメリット

壁式鉄筋コンクリート造はその名の通り、壁で建物を支える構造です。柱はなく、開口上の壁と同じ厚さの梁と壁で構成されています。

また、6面体で地震や台風などの外力を受け止めるため、強度性に優れています。建物自体が重くなる傾向があるため、高層建築には向かず、主に5階建てまでの建物に用いられています。

メリット・デメリットをまとめると、次のようになります。

【メリット】
  • 地震に強く壊れにくい
  • 火災に強い
  • 耐久性が高い
  • 柱や梁が室内に出っ張らず、すっきりする
  • 型枠が単純なため、施工性が高い
  • 合理的なコストで建設可能

【デメリット】
  • 壁が構造体のため、間取り変更やリフォームに制限がある
  • 大開口が取りにくい
  • 原則5階まで(特殊工法を除く)

名前からしてちょっと堅苦しくて、とっつきにくいかもしれません。でも、実はこの壁式鉄筋コンクリート造、地震にとても強い “隠れた優等生”なんです。

あまり一般的に知られていない壁式構造ですが、建築に携わる人間からすれば「この構造の耐震性はもっと評価されるべき」と感じてしまうほど、地震に対して強いのです。

では、なぜ「地震に強い」と言い切れるのか? その根拠は、過去の地震被害の実績にあります。

3 過去の大震災が証明する壁式鉄筋コンクリート造の驚異の耐震性能

家の模型

注目すべきは、過去の大震災での被害がほとんどない構造という点です。

地震のニュースを見るたびに、「この建物、大丈夫かな」「どの構造が一番安心なんだろう?」と不安になる方も多いと思います。そんな時、頼りになるのがこの壁式鉄筋コンクリート造です。

構造自体が一つの“箱”のようにガッチリ固められているので、地震の揺れを分散して受け止めやすいという特長があります。

地震名 発生年 震度/マグニチュード 被害状況の概要 備考
兵庫県
南部地震
1995年 震度7 / M7.3 ほとんどが無被害または軽微に属する被害だった。 建物の直下を地割れが走った建物は、一部でひび割れ(幅5mm程度)が確認されたが、構造的な損傷は軽微だった。周辺には、同様に地割れが横切ったラーメン構造の建物があり、損傷は大きかった。
熊本地震 2016年 最大震度7(2回)
/ M7.3
全体の99.8%が無被害または軽微であり、小破以上の割合は0.2%だった。小破※1が1棟で基礎構造では中破※2が1棟。 中破と判定された建物は基礎の破損は軽微、上部構造はひび割れ等確認されなかったが、基礎の傾斜から中破と判定された。
能登半島地震 2024年 震度7 / M7.6 2棟被害報告あり。1棟は、13棟の共同住宅が存在する団地内の1棟で、小破~中破程度の被害と推定される。団地内の建物周辺では地滑りが生じていた。他12棟の被害は軽微。
もう1棟は上部構造に目立った被害は確認されず、基礎の傾斜と沈下量から中破と判定された。
速報による情報のため、今後詳細な調査結果を待つ必要あり。


※1 小破:建物を使用する上で支障がない程度のわずかな損傷のこと。
※2 中破:耐力壁のひび割れなど構造部材の修理が必要な損傷のこと。

もちろん、絶対に壊れないとは言い切れません。ですが、これだけの震災を乗り越えてきた“実績”がある構造というのは、他にはなかなかありません。

4 「鉄筋コンクリート造」表記に要注意!購入前に知っておくべき落とし穴

表記に要注意

ここで一つ注意していただきたいのは、「鉄筋コンクリート造」と書かれていても、それが必ずしも“壁式”とは限らないということです。

実は、物件の広告やパンフレットに「壁式」と明記されていることは多くありません。多くの場合は「鉄筋コンクリート造」とだけ書かれています。

つまり、マンションや戸建住宅を購入または借りる際には、「この鉄筋コンクリート造は壁式構造なのか、ラーメン構造なのか」を確認する必要があるというわけです。

5 一級建築士が教える!壁式鉄筋コンクリート造の見分け方

壁式鉄筋コンクリート造の建物を見分ける主なポイントは以下の通りです。以下のような特徴があれば、壁式構造である可能性が高いといえます。

壁式構造の可能性が高い建物の特徴
  1. 室内に柱が見当たらない
  2. 天井上部に梁の出っ張りがない
  3. 1階部分に駐車場やエントランスなどの大空間がない
  4. 5階建て以下
【壁式構造の可能性が高い】
壁式の可能性が高い室内
壁式の可能性が高いCG

【壁式構造の可能性が低い】
壁式の可能性が低い室内
壁式の可能性が低いCG

間取り図は簡略化して書かれていることが多いため、物件の写真や内覧で判断することをおすすめします。

なお、これらの特徴はあくまで一般的な傾向であり、例外も存在します。正確な構造は、建物の設計図や建築確認申請書などで確認する必要があります。

6 壁式鉄筋コンクリート造のデメリットを克服したさくら構造の4工法

私たちさくら構造株式会社は、壁式鉄筋コンクリート造のポテンシャルを最大限に引き出し、より安全で快適な住まいを提供するために、さまざまな新しい工法の開発に取り組んでいます。

壁式鉄筋コンクリート造のデメリットである「間取りの自由度の低さ」「大きな開口部が設けにくい」といった点を克服した4つの自社工法をご紹介します。

6-1. ハイウォール工法|日本初、8階建ても可能な壁式鉄筋コンクリート造

建築基準法の耐震基準とTSUYOKUの基準

建築基準法では、壁式鉄筋コンクリート造は原則として5階建てまでとされています。

さくら構造が開発したハイウォール工法は、その制限を超え、8階建ての建設を可能にしました。日本で初めて、8階建ての壁式鉄筋コンクリート造として建築確認を取得しています。

高層でも壁式鉄筋コンクリート造の安全性と快適さを活かしたい、そんなニーズに応える革新的な工法です。また、ラーメン構造に比べ、合理的なコストで建設することができます。

>>ハイウォール工法の紹介ページはこちら

こちらの動画もおすすめ

【動画】全国セミナーで講演:壁式8層構造設計ハイウォール工法


【Youtube】https://youtu.be/Rcn8SqYYvN0?si=Mlc-raFX1pdx8krd

さくら構造主催で行われた、全国セミナー「建築業界経営者のための躯体工事費削減のポイントと壁式8層建設のメリット」の内容を抜粋しました。

6-2.スマートウォール工法|ローコストを実現する薄肉シングル配筋

スマートウォール壁断面図

一般的に、壁式鉄筋コンクリート造は「ダブル配筋(鉄筋を2列並べて配置)」で行います。

このスマートウォール工法は、あえてシングル配筋(鉄筋1列)にしています。それによって、ダブル配筋に比べ鋼材料と配筋工事の手間が1/2となります。施工性を高め、工期の短縮やコストダウンにもつながる工法です。

>>スマートウォール工法の紹介ページはこちら

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【動画】薄肉シングル配筋壁式構造スマートウォール工法


【Youtube】https://youtu.be/jO-OrwDXQXU?si=pUZPkKd0SntqhbYp

さくら構造主催で行われた、全国セミナー「建築業界経営者のための躯体工事費削減のポイントと壁式8層建設のメリット」の内容を抜粋しました。

6-3.スペースウォール工法|大空間を可能にした壁式鉄筋コンクリート造

壁式鉄筋コンクリート造には「大空間が作りにくい」というデメリットがあります。

スペースウォール平面形状図

しかし、スペースウォール工法では、壁を極限まで減らすことで、大空間をつくりやすく、間取りの自由度が向上します。住む人のライフスタイルに合わせて、柔軟なプランニングが可能になります。

>>スペースウォール工法の紹介ページはこちら

6-4.スカイウォール工法|ピロティ形式の壁式鉄筋コンクリート造

スカイウォール工法

1階に店舗や共用スペース等の大きな空間を設けた“ピロティ”形式の壁式鉄筋コンクリート造の設計は難しいとされてきました。

しかし、1階のみをラーメン構造にして、2階以上を壁式にするという発想で、その問題をクリアしたのがスカイウォール工法です。これにより、1階に大空間+上階に強固な耐震構造を実現できるようになりました。

>>スカイウォール工法の紹介ページはこちら

これらの新しい工法によって、壁式鉄筋コンクリート造の可能性はさらに広がっています。

7 まとめ|地震に強い家を選ぶなら「壁式鉄筋コンクリート造」も有力な選択肢

鉄筋コンクリート造は鉄筋コンクリート造でも、地震に強いのは「壁式鉄筋コンクリート造」という構造です。
壁全体で建物を支えるため、地震の揺れを効率的に分散させ、建物の変形を抑える効果が期待できます。

一般的に「地震に強い建物」というと、最新の免震・制震(制振)装置やゴツい柱があるイメージを持たれがちです。ですが、構造そのものが地震に強いという意味で、壁式鉄筋コンクリート造は、もっと評価されるべきであり、広く知られてよい存在だと思っています。

住まいは、安心・安全が第一。そのうえで、快適で、長く愛せるものであってほしい。

そう考えた時、この「壁式鉄筋コンクリート造」という選択肢をぜひ頭の片隅に置いておいていただけたら嬉しいです。

もし、現在お住まいの建物や、購入を検討している建物の構造が気になっている場合は、不動産業者や建築の専門家に確認することをおすすめします。正しい知識を持つことで、より安心できる住まい選びに繋がるはずです。

建物選びや構造に関して疑問や不安があれば、ぜひ私たち「さくら構造」にご相談ください。専門家として、一生活者として、悩みに寄り添ったご提案をさせていただきます。

■参考文献:

  • 「平成7年阪神・淡路大震災建築震災調査委員会中間報告」建設省
  • 「2016年熊本地震災害調査報告」日本建築学会
  • 「平成7年阪神・淡路大震災建築震災調査委員会中間報告」国土交通省

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